2023年5月10日
共同研究
A-SEEDS、信州大学、サーモフィッシャーサイエンティフィックと、CAR-T細胞療法の低コスト化に向けた遺伝子導入の条件検討に関する共同研究契約を締結
株式会社A-SEEDS(長野県松本市、代表取締役:柳生茂希、以下、A-SEEDS)は、国立大学法人信州大学(長野県松本市、学長:中村宗一郎、以下、信州大学)医学部 小児医学教室の中沢洋三教授らの研究グループ、サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループ ライフテクノロジーズジャパン株式会社(グループ本社:東京都港区、 代表:室田博夫、以下、サーモフィッシャー)と、キメラ抗原受容体T細胞(以下、CAR-T細胞)療法の低コスト化と効率化を目的として、遺伝子導入の条件検討に関する共同研究契約を締結し、共同研究を開始したことを発表します。
この共同研究には、サーモフィッシャーの独自技術を基に開発した電気穿孔法(エレクトロポレーション法)による遺伝子導入装置「Invitrogen Neon Transfection System」、「Gibco CTS Xenon Electroporation System」が使用されます。

がん治療分野において、外科療法、化学療法、放射線療法に続く新しい治療法として、免疫療法への期待が高まっています。血液がんの治療で高い有用性が示されているCAR-T 細胞療法が最先端のがん免疫治療法として注目を浴びており、難治性がんの患者さんにも効果が得られていることから、他のがん種への応用と展開が期待されています。
従来、CAR-T細胞はウイルスベクターを用いた方法で作製されてきましたが、信州大学とA-SEEDSは、酵素を利用したpiggyBacトランスポゾン法とエレクトロポレーション法を組み合わせることで、より簡便で安価、かつ持続的な薬効を示すCAR-T細胞の製造手法を確立しました。この度、サーモフィッシャーは本共同研究に参加し、さらに低コストで効率的な次世代のCAR-T細胞製造に取り組みます。
今後、多くの患者さんにCAR-T細胞療法を届けるため、閉鎖系システムによる安全性の向上と、より効率的で安価に細胞を製造するシステムが求められます。 加えて、細胞医療の分野で高い技術水準を維持しつつ小規模スケールで確立された条件を、 製造スケールに移行する際のスケール拡張性や柔軟性も必要です。
本共同研究は2023年5月10日から有効となり、CAR-T細胞の製造に最適な遺伝子導入条件の確立を目指します。
信州大学医学部小児医学教室 教授 中沢洋三氏のコメント
「私たちが15年かけて研究開発してきた非ウイルスCAR-T細胞は臨床応用の段階に入りました。今後、国際競争を勝ち抜き、1日でも早く一人でも多くの患者さんに私たちのCAR-T細胞を届けるためには、実用化に即した製造方法の確立が急務となります。この産学連携共同研究を通じて、国産CAR-T細胞の実用化に全力を尽くします。」
サーモフィッシャー バイオサイエンス シニアダイレクター 内田淳介氏のコメント
「サーモフィッシャーは大学などの研究機関、および企業における細胞治療の研究開発を支援しており、本共同研究で用いられる研究用試薬、機器なども含め、多くの製品や受託サービスを提供しています。本共同研究に使用されるNeon Transfection Systemは、遺伝子導入が困難な細胞種に対しても効率的な遺伝子導入が可能です。 また、製造スケールへの移行を見据えた閉鎖型CTS Xenon Electroporation Systemとも互換性があり、研究からプロセス開発、商用生産へのスムーズな移行をサポートできます。 私たちはこれらの製品をCAR-T細胞製造の条件検討に役立てることで、細胞治療の発展に貢献したいと考えています。」
A-SEEDS 代表取締役 柳生茂希のコメント
「このたび、サーモフィッシャー、信州大学とともに、新規CAR-T細胞の製造開発研究が開始されることを大変嬉しく思います。我が国のCAR-T細胞療法の開発は長年欧米の後塵を拝してきましたが、我々の技術を結集させることにより、我が国初の画期的なCAR-T細胞療法が開発できるように全力を尽くしたいと考えております。」
サーモフィッシャーのNeon Transfection SystemとCTS Xenon Electroporation Systemの詳細については、以下のサイトをご覧ください。
Neon Transfection System
CTS Xenon Electroporation System